働き続けるために必要なのは、業務のスキルだけではありません。周囲と協力すること、困ったときに相談すること、ストレスに対処し、日々の生活を整えることも大切です。
こうした「働くための土台を整える」場所として、2026年4月、就労移行支援事業所CASTビジネスアカデミーの4階に「CASTコミュニティルーム」がオープンしました。
「3階実務訓練+4階コミュニティルーム=自分らしい就職へ」
実践的なオフィスワーク実務を学ぶ3階と、コミュニケーションや心・生活の面を支える力を育む4階。両方の経験を通して、就職とその先を支えているのがCASTです。
オープンから半年。CASTコミュニティルームでの具体的な取り組みをご紹介します。
「好き」「得意」をきっかけに、自分たちで企画・運営する


まず人気の土曜日レクリエーションから。ガンプラ教室やミニ四駆大会、刺し子教室、アニソンクイズ大会など、ご利用者様の興味や得意なことを生かした活動を行っています。
特徴は、ご利用者様自身が企画・運営に取り組んでいること。企画を考えるところから、チラシの作成、朝礼でのお知らせ、買い出しまで、職員のサポートを受けながら主体的に進めています。
一つの企画を形にするために、準備の段取りを考え、周囲に相談し、参加する人にわかりやすく伝える。「好き」「得意」を入り口にしながら、仕事につながる経験が詰まっています。
「自分でもできた」という自信につなげるとともに、共通の趣味を通して交流を広げることも、この活動のねらいです。
話す・聴く・伝える経験を重ねる
ディスカッションプログラムでは、毎月さまざまなテーマや方法で、コミュニケーションを図っています。
「あなたならどうする?」というテーマについて付箋に意見を書き、模造紙に貼ってまとめたり、チームで同じ回答を目指して話し合うゲームをしたり。相手にインタビューをして、その人を紹介する「他己紹介」にも取り組んでいます。
9月には、「自分の取扱説明書」をテーマにプレゼンテーションを作成し、発表しました。PowerPointを初めて使う方もおり、資料づくりに挑戦する機会にもなりました。
自分について考え、言葉にして相手に伝える。そして、ほかの人の発表を聴いて、さまざまな特徴や考え方に触れる。こうした経験を通して、人前で話すことに慣れながら、自己理解や他者理解を深めています。

自分の心との付き合い方を学ぶ
心理プログラムでは、「ストレスマネジメント」「ポジティブシンキング」「注意・集中について」「自分の考え方のクセを知ろう」など、ご利用者様の課題に沿ったテーマを取り上げています。
例えば「ポジティブシンキング」の回では、チェックリストで自分の傾向を振り返った後、物事の捉え方を変える「リフレーミング」のミニワークを行いました。
ネガティブに捉えたことを、別の視点から言い換えてみる。一方で、危険に備えるためにはネガティブな考え方も必要であり、バランスが大切であることも学びました。
ご参加の方からは、次のようなご感想が寄せられています。
「規則正しい生活など当たり前のことでポジティブになれるんだと思いました。“自分をほめる”は実践してみたいと思います」
「リフレーミングという考え方を知れてよかった」
自分の状態や考え方の傾向を知り、自分に合った対処方法を見つけることは、就職に向けた準備だけでなく、働き始めてからのストレスへの対応にもつながります。
暮らしと仕事の土台を、一人ひとりに合わせて整える
安定して働き続けるために、日々の生活を整えることから、社会人としての振る舞い、自分の目標に向けた学習まで。コミュニティルームでは、次のようなプログラムも実施しています。
生活訓練で、毎日の暮らしと仕事の基礎を学ぶ
報告・連絡・相談、メモの取り方、時間管理のほか、栄養素やカロリー計算など、食事についても学んでいます。
仕事中に必要な行動と、日々の暮らしの両面を取り上げ、自立した生活に向けた基礎を一つひとつ確認しています。
ビジネスマナーの意味から学ぶ
ビジネスマナーのプログラムでは、講師から、なぜマナーが必要なのか、企業はどのような人材を求めているのか、社会人としてどう振る舞うかを学びます。
形を覚えることに加えて、その意味や相手の立場を理解しながら、職場で信頼関係を築くための振る舞いを考えています。
eラーニングで、自分の目標に向かって学ぶ
eラーニングでは、自己理解に役立つ内容やビジネスマナーなどを自習することができます。資格取得に向けた勉強にも活用しています。
自分に必要な知識や、関心のある分野を学びながら、就職に向けた準備や選択肢を広げていきます。

法人内の専門性を生かした、ゲスト講師のプログラム
CASTを運営している社会福祉法人すいせいのさまざまな職員をゲスト講師として招き、それぞれの専門知識や経験を生かしたプログラムも実施しています。
心理士によるプログラムや、合理的配慮・企業とのマッチングについてゲーム感覚で考えるプログラム、元ハローワーク職員による「働くこと」をテーマにした講義とグループワークなどを行いました。福祉サービスについて学んだり、家事について考えたりする機会も設けています。
仕事・心理・生活など、さまざまな視点から学べることも、法人内に神戸市相談窓口などの機能を持つ、すいせいの強みです。
自分を知ることに加え、働く環境や暮らしを支える制度についても知り、自分らしい働き方や暮らしについて考えています。
実務スキルと、それを支える力を育て、自分らしい就職へ

職場では、担当する業務のほかにも、さまざまな場面への対応が求められます。相手の意見を聴きながら仕事を進める、わからないことを整理して質問する、負担を感じたときに相談する。そして、日々の体調や生活リズムを整える。こうした力も、安定して働き続けるための大切な土台です。
コミュニティルームでの活動は、その一つひとつを練習する機会になっています。レクリエーションの企画では段取りや周囲との協力を、ディスカッションでは相手の話を聴き、自分の考えを伝えることを経験します。心理プログラムでは自分の傾向や対処方法を学び、生活訓練では毎日の暮らしを見直します。
楽しみながら参加する活動も、自分と向き合う時間も、目指しているのは「働くための土台を整える」ことです。
3階の実務訓練で身につけたスキルを、実際の職場で発揮する。そのために、4階のコミュニティルームで、自分の状態を理解する力、人と協力する力、日々の生活を整える力も育んでいく。CASTビジネスアカデミーは、二つのフロアでの経験をつなげながら、一人ひとりの自分らしい就職と、その先の「働き続けること」を支えています。
「仕事のスキルも、人との関わり方も学びたい」「就職に向けて、生活や気持ちの面から準備したい」という方は、ぜひ見学・ご相談ください。実際の訓練やコミュニティルームの様子をご覧いただきながら、ご自身に合った就職への一歩を、一緒に考えていきます。
